◆基本方針


●社長の「心の糧」を重視した経営サポート

 私たちの使命は、経営の立て直しを中心とした財務面での中小企業経営者のサポートです。
 
 経営の立て直しの過程で「心の糧」も重視します。どういう意味か、私の経験をお話ししましょう。
 
 かつて私は焼き肉屋を買収して経営したことがあります。私なら経営できるという自信があったのです。
 
 ところが、努力むなしく、経営が安定しません。ついには従業員に給与の遅配をしてしまうまでに追い詰められてしまいました。
 
 社員からアルバイトまで計20人ほどに集まってもらい、私はみんなに頭を下げました。当然従業員からいろいろな言葉を投げつけられます。私にはとてもつらい、みじめな時間でした。
 
 従業員の憤りは当然ですから、私は真摯に受け止めました。しかし、こんな状態は本来の自分ではないと思ってしまうのです。自分の現状を自分が消化しきれない、悪夢のような日々が続きます。資金繰りの悪化に直面した当時の私は体が動かなくなっていました。いま頑張らなければならないと頭では分かっているのに、動く気力がないのです。心が折れていたのかも知れません。
 
 資金繰りに行き詰まり、当時乗っていたBMWを人に預けてお金を借りました。その場しのぎの借金です。しかし、返済できなかった。BMWは戻ってきませんでした。わずか数百万円のお金を返せなかったことで、私の「心の糧」だったBMWを手放さざるを得なくなったのです。やるせなかった。
 
 私のこんな拙い経験を踏まえて、事業再生に取り組む経営者の心のフォローを私は重視しています。頭では分かっているのに体が動かないことを私は知っていますし、社長に「心の糧」があれば、それを守りながら再起を期す努力を社長と一緒に続けます。
 
 私がほかのコンサルタントと違うとよく言われるのは、気力がなくなって動けなくなることや「心の糧」の重要性を経験で知っているからに違いありません。

●命懸けの会社経営をさせない

 私は社長に、「命懸けの会社経営」をさせません。最初にこう宣言するのは、ある光景が頭にこびりついているからです。

 

 鹿沼市の建設業の社長が50歳で亡くなり、葬儀に駆けつけたあの日――。

 

 葬儀場に着き、線香を上げに祭壇に進んだ私に、遺族席のお子さん2人の「お前のせいだ」という目が私に突き刺さりました。私は思わず目を背けてしまったものの、つらくて申し訳なくて、以来忘れることができません。

 

 私は社長が亡くなる数カ月前に顧問になり、1000万円の資金調達のお手伝いをしました。年商5000万円ほどの会社でしたから、1000万円は小さな金額ではありません。うまく行きそうだと社長から喜びの電話をいただいたのですが、そのあと銀行に何があったのか、突然白紙になってしまったのです。

 

 その直後、社長の奥様から「夫が見当たらない」と電話がかかってきたのはクリスマスイブの夜です。いやな予感が胸いっぱいに広がりました。そしてその翌日朝、自ら命を絶った社長の姿が発見されました。

 

 「俺は生命保険に入っているから、何かあればこれを使えば大丈夫だ」と笑いながら言っていた顔が、今でも記憶に残っています。社長は、「会社経営に命を懸けて」しまったのです。

 

 一方で、年商100億円、借入50億円の建設業が不渡りを出した日にその社長に紹介されたことがあります。社長は「銀行に裏切られた」と釈明するのですが、私が見た限りではもともと融資は難しかっただろうと思う案件でした。

 

 しかし、こちらの社長は50億円という天文学的な負債を背負っているにもかかわらず、それにまったく動じることはなかったのです。その結果、最終的に弁護士を紹介し、その会社は民事再生でやり直すことができました。

 

 1000万円の負債で命を絶った社長と50億円の負債でも動じずやり直せた社長を見て、私は声を大にして言いたいのです。「命懸けの会社経営をしてはいけない」と。

 

 

 会社経営では、良い時もあれば悪い時もあります。時に、一生かけても返せないような負債を背負ってしまうこともあるのも会社経営です。しかし、そんな状況であっても必ず道はあります。会社経営に命を懸ける必要はないのです。

 

 

 社長の仕事は重い。孤軍奮闘する社長を徹底的にサポートし、会社経営で命を絶つ社長をゼロする。そんな思いで私はこの仕事を続けています。